秘すれば花 渡辺 淳一 サンマーク出版 2001-07 by G-Tools |
作家・渡辺淳一さんによる『風姿花伝』解釈本。まず最初に原文、その後に訳文・解釈の順に載せてあるのは、できるだけ原文を紹介しようとする姿勢が感じられて好感が持てます。
『風姿花伝』の原文から感じられるのは、渡辺淳一さんが
現実に経験し、体得したうえで述べているだけに、高邁ふうな哲理とは異なり、きわめて平明で現実的で、それだけに強い説得力をもっている
と序文に書いてらっしゃる通り、綺麗事ばかりではないし、また時に残酷なまでに潔い、だからこそすんなりと理解できる意見ばかりでした。
ただ解釈にて、しばしば現在のビジネスなどの場面に喩えられているのは少し違和感。例えば「物学条々」の鬼にある、「巌に花の咲かんが如し」という言葉を管理職への心構えに通じるとしている箇所などですが、これはどんな道であれ、達人の言葉には普遍性を持つものがあるということであって、原文はあくまで能役者として「花」を咲かせることに関する記述であり、無理に読んでるように感じました。
もともと雑誌『プレジデント』に連載されていたものだけに、仕方がないのでしょうが、能ファンの私は一般向けに内容を分かりやすくする「方便」として読んでました。
その点以外は実に読みやすい文章で説かれた分かりやすい『風姿花伝』解釈書といえるでしょう。
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