京都の狂言師 (四世)茂山 千作 世界文化社 2004-10 by G-Tools |
茂山千作師のお話を筆録した本、なのでしょうか?
一月から始まって月別に話をされてますが、京都弁の口調や「ダーッ」「サーッ」といった擬態語、「わははははっ」という笑い声も書かれているのが千作師の実際の口調を思い浮かべさせ、なんとも楽しい気分になりながら読めます。ここまで千作マジック?(笑)
冒頭で千作師が
このたび、私とこの暮らしや狂言についてお話しすることになりました。私は、大正八(一九一九)年の生まれですが、京都も私の子ども時分とはえらい変わってきております。ぼちぼちと昔のことを思い出しながらお話しさせていただきますので、どうぞよろしゅうお願いいたします。
と語られているように、話題は京都の旧家らしい季節季節の風習(正月、節分、ひな祭り…)や折々の寺社への奉納の話、千作師や弟の千之丞師の幼いころの京都についてなど、今は失われつつある古き良き話が多いです。狂言に直接関わる話が増えて来るのは九月以降ですが、京都の町と狂言の関わりの話もあって、書名『京都の狂言師』を裏切らない本でした。
写真も多く掲載されていますが、舞台写真より、神棚や標縄のある稽古場での謡初、節分の豆まき、千作師の祇園祭・長刀鉾の稚児姿、茂山千五郎家先々々代から奉納されている『神楽式』の翁姿といった行事のものが多いのはこの本の方針全体が表われていますね。
巻末に千作師と野村萬斎師の対談も収録されてます。しかし、奉納狂言というのは茂山千五郎家以外ではあまり一般的ではないというのは意外でした。
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→ちょこほりわんこ:『京都の狂言師』
一昨日、横浜能楽堂で狂言会を観てきました。12人が演じる「私の一曲」を4回に分けて上演する会で、私は行けるのが一昨日の夜の部だけだったのですが、たまたま茂山家は千作さんでした。プログラムに「何故この曲を選んだか」ということがご本人の文章でちょっと書いてあるのですが、千作さんのは「話してるまんま」の文章なのです。微笑ましくて可愛くて思わずにんまりしてしまいました。
昨日、茂山狂言会名古屋公演に行ってまいりました。目玉は千五郎さんの還暦記念『釣狐』でした。『財宝』の祖父役の千作さんの何て可愛らしいこと(恐れ多い表現ですけれども)!!あの笑顔は、こちらに伝染します。金曜日の夜、1週間の疲れでドローっとした気分が吹っ飛びました。優しい、あったかい表情で、とても心が和みました。いいお顔のお地蔵さんとか仏像を見た時のような幸せ感で心があたたまりましたよ。(ただし、宗教心はあまりないですけど。)
★peacemanさん
横浜能楽堂の狂言会、良いですよね。
いろんな狂言の家が一同に集まって見れるのですから。
茂山千作師は、本文で「千作マジック」なんて言葉を使って
しまいましたけど、微笑ましさというか、不思議な雰囲気を
持ってますよね。千五郎家全体は決して好きなことばかりでは
ないのですが、千作師は無条件に良いなぁ、と感じます。
★挿頭花さん
茂山狂言会は、京都・東京・名古屋と同じ演目だったみたいですね。
『財宝』は長寿の老人が孫たちに名をつける、という狂言ですが、
喜劇の要素というよりも長寿の老人のめでたさ、これに尽きます!
千作師は「可愛い老人」というのが本当に似合いますよね。