なんて素敵にジャパネスク(8)炎上編 氷室 冴子 集英社 1990-12 by G-Tools |
「もっと早く、あなたと出会うべきでした。そうすれば、わたしにも違う方法があったかもしれない」─謎めいたセリフを残して、自らの敗北を認めた帥の宮。瑠璃姫の活躍で東宮位を簒奪しようとする陰謀は砕かれた。しかし、何かが違う、間違っている。なぜか瑠璃姫の心はすっきりしない…。いやな予感は的中し、陰謀に隠された衝撃の真相が!? 帥の宮編、完結。
長かった帥の宮をもう裏の主役(表の主役はもちろん瑠璃姫)とするシリーズも完結です。もうここまで来るとノンストップで読んでしまいました。実は7巻を読んだ直後にはすぐ読んでしまったのですが、きちんとした文章にできなかったので、感想としてこのブログに載せるのが遅くなってしまいました(^^;)
ストーリーに関して書いても、作者・氷室冴子さんの文章に勝るものはないでしょうから書きませんが、思えばこの帥の宮という人物、これまでその智略・行動力・判断力・冷酷さがこれでもかと描かれてきた一方で、不思議と全く野心家という印象はないのですよね。そう描かれていない。
だから、今までずっと「一品の宮になる」「今まで捨て宮同然だったから、かえって地位に執着する」と説明されても、なんだか腑に落ちない。そして、この巻を読むとやっぱり!と。すんなりと心に入ってきます。もう吉野君編の時と同じぐらい、いやそれ以上に涙腺が緩みっぱなしでした。例によって列車内で読んでますから、ちょっと恥ずかしいのですけどね(汗)
瑠璃姫はいつでも精一杯ですし煌姫もパワフルですが、クライマックスだけあって、大弐も由良姫も、そして最も儚げだった桐壺女御までもが、それぞれの大切な人のために体を張って活躍する姿がすごくて…。なんか今まですごかった帥の宮の立場も形無しというか。でも最後に活躍して締めるのは、高彬なんですよね(^^)
…と、完全に雑感の世界ですね(^^;) ストーリーを書かないで、漠然とした私の感想だけを書いてるので、『ジャパネスク』を全部読んでる人以外には全然理解できない文章になってしまって申し訳ございません。
でも、これで『ジャパネスク』も完結します。あとがきを読む限り、氷室冴子さんがアンコール編を書くつもりだったようですが、結局書かずじまいのようですね。
基本的にコバルト文庫ですし少女向けで、しかも主人公の喋り口調の文章ですから、冗談やコメディ的な部分もたくさんありますけど
(細かい例は上げ切れませんが、1巻クライマックスの鷹男「私の顔を見忘れたか」のセリフなんて、馬に乗っての登場と言い、「暴れん坊将軍」以外の何者でもないと思うんですが(笑) ちなみに『ジャパネスク』1巻出版は1984年。「暴れん坊将軍」の放送開始は1978年)
1巻とアンコール編を除くと、全体としてはむしろシリアス。でも深刻に成り過ぎないのは1巻でしっかり世界観を作ってしまって、「明るい」という下地が出来ていて、それにちょくちょくと戻ることができるからなんだと思います。
ラブ・コメディと書かれるように恋愛要素も、確かに無視はできないですけど、いわゆる「恋愛もの」で描かれる、男女の感情の機微だとかがしつこく描写されているわけではなくて、人間関係を描く上でそういうものもあるって感じではないでしょうか。なんせ、恋愛沙汰と陰謀で彩られる平安時代を舞台にした小説ですしね(笑) だいたい私はベタベタな恋愛ものって苦手ですが、普通に楽しんで読めたってことは恋愛ものじゃないんですよ、この小説。
とにかく、面白かったです~。ボリュームはありましたが、数年後にまた読み返してみたい小説です。そのときはまた抱く感想が違うんでしょうね。それがまた楽しみだったり。
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無事読み終えられて、感想お疲れさまでした、柏木さん(^^)
最後の「ジャパネスク」についての柏木さんの感想は正に同感で
小説版愛読者としても、付け足すところ無し!という感じです。
この日記を読んで「ジャパネスク」の世界に興味を持たれた方が
一人でも増えればこの上無く嬉しいですねえ(*^^*)
最後の帥の宮、瑠璃、高彬以外の人々の一丸となった活躍ぶりも
本当に読み応えがあります!オススメ!!
主役だけの人生ばかりがメインじゃなく、皆が自分の人生に命
かけて(それが不器用でも間違っていると言われようと必死で)
生きているんだ、というメッセージは「ジャパネスク」全体を
通して流れているように思います。
そこが読者に共感を与えるのでしょうね。
私は吉野君辺りの話の時は「とても切ないな~」とは思いますが
いつも泣くまでは行かないんです。
帥の宮編ではやっぱり泣いちゃいますね(^^;)
帥の宮が何をそこまで守りたかったのか、徹底して悪になれるまで・・・
が判った辺りは、今までの帥の宮の完全な悪っぷりが書かれているだけに
見事にぶわあ~と号泣してしまいます(苦笑)
最後の最後での藤宮様の台詞は印象的。
(読んだ人だけにわかります ^^;)
ふう~みんな小器用に生きている人なんていないな、と共感です。
柏木さんの感想に付け足すところは無いとか言っておきながら
やっぱり付け足してしまった私でした。
こんにちは、ノンさん。コメントありがとうございます~。
最初の1巻の感想を書いたのが、4月14日ですから、
約1ヶ月半かけて最後までの感想を書いたことになりますね。
全10冊ですから、こんなものでしょうか。
『ジャパネスク』普及を狙っているわけではないのですが、
私が面白いと思っていることを共有できる方が増えれば
嬉しいばかりです。それがネットでサイトを作っている目的ですし。
私にとっては吉野君編も負けず劣らず、切ないですよ~。
もちろん、帥の宮編の方がボリュームがありますからその分、
書き込みが細かいですけどね。
これで、やっとほかの本の感想もかけます~。
って冗談(笑)
こんばんわです~
ネットできる環境が引越しにより少しの間、絶たれていたので、
コメントが遅くなってしまいました~(悔しいです)
恋愛物がダメって人でも、このお話は大丈夫っていう方多いですよね。
うちの旦那にも、このお話を読んでもらったのですが、なんせ活字がダメなので、小説は断念してしまったので、漫画を読んでます。
無理やりに読ませている訳では、ありませんが、私もこの作品大好きなので、やはり読んでもらいたいと思って、旦那に薦めてみましたです。
炎上編をリアルタイムで読んでいた時は、私は、受験生でしたが、受験勉強そっちのけで、大弐そして桐壺さま由良姫に
共感し、こんな命がけの恋愛をしてみたい。と思ったほどでした。
でも、年齢を重ねていくにしたがって平凡なほど幸せなものはないと気付きましたが・・・(汗)
帥の宮は最後でおいしい所を持っていってしまった様な気がします。
氷室先生の文章はリズミカルで読み手を引き付ける文章を書かれると思いました。
なんだかうまくコメントをかけなくてすみませんでした。
桐さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
私は恋愛ものがダメってことはないのですが、あまり、
それだけに終始してしまうようなものは好きではないのです(^^;)
旦那さんにもオススメ中ですか!(^^) 普及活動が進みますね(笑)
普及なんていうと何ですが、自分が面白いと思うもの、好きなものを
同じく好きな人が増えればうれしいものですから。
身近な人ならますます。
氷室冴子さんの文章には私も引き付けられました。
また、何かの折には宜しくお願いいたします。
はじめまして。桐さんと同じく『ジャパネスク』を検索して飛んで参りました。
男性でもジャパ好き、そして高彬好きの方がいらっしゃるんですね。
嬉しさのあまり、書き込ませていただくことにしました。
ジャパネスクのストーリーの流れを分析的に書いていらっしゃってますよね。とても新鮮に感じました。
私も一時期、ジャパネスクを分析する!みたいなHPを持ってたので、読み返してまた重箱の隅を突付きたくなってしまいました。
でもまあ、ジャパネスクについて語りだすとキリがないので、これくらいにしておきます。
話は変わりますが、わたくし、実は1年くらい能管を習っていたことがあります。
ただ横笛を吹いてみたかっただけなんですが・・・。
夕湖さん、はじめまして。コメントありがとうございます。
高彬は好きですよ。守弥のまぬけっぷりの方に親しみは感じますが(笑)
別のところで、桐さんのコメントとして書いてますが、
「分析的」なのは私の性格なんでしょうね(^^;)
特に「分析しよう」と読んだわけでもないのですが…文章を
書いているとますます、そうなる傾向があります。
このブログはあくまで、人に読んでいただくために文章を
書く場ですから、「良かった!」と書いているだけでは、
伝わり難いかと思ったりして…。
能管はなかなか音が鳴らなくありませんか?
私は全然鳴らなくて、困っています(汗)
なんて素敵にジャパネクス<3~8> 氷室冴子 ★★★★★
家柄はバツグンなのに、性格が平安時代の姫らしくない、瑠璃姫は父親に結婚しろと言われる毎日。
1、2巻は事件に巻き込まれ、幼馴染のエリートコースをひた走る、堅ブツな高彬と結婚までいたらなかったのですが、3巻からは晴れて人妻に。
しかし、生まれ持った運命