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ある日、私が自主練習として『天鼓』のキリを謡っていて、 また打ち寄りて現か夢か。また打ち寄りて現か夢幻とこそ。なりに… そこまで謡って、突然詰まってしまいました。最後は「なりにけれ」だったか、それとも「なりにける」だったのか。「なりにけ〜…(悩んでちょっと止まる)…れ(←少し不安げ)」と、とりあえず謡ってから、慌てて合ってるか確かめました(笑) ちなみに正解は「なりにけれ」。合ってて良かったです(笑) 多くの謡は「…ける」、または「…けれ」で終わっています。 「…ける」の例
「…けれ」の例
これらをよく謡い間違えるんです、私(^^;) ちゃんと暗記してないってことなんですが、これを分けて覚えるうまい方法はないものかと。謡うたびに「けれ、ける、どっちやったかな〜」と悩んで、謡が不安げになるのは避けなければなりません。 そんなことをちょろっと口にしたら、ある先輩がこともなげにこう仰せられました。 「前に『ぞ』があったら『ける』、『こそ』があったら『けれ』やで」 確かに。実は単純なことでした。中高の古典の授業で習った「かかり結びの法則」です。完全に忘れてたなぁ(汗) 一応説明しておくと、「ぞ」や「こそ」は係助詞と呼ばれる品詞で、結びを連体形にしたり、已然形にしたりする働きを持ちます。「ける」にしても「けれ」にしても、文法的にいうと過去の助動詞「けり」の活用形。それが「ぞ」「こそ」によって形が変わっていたのです。「ぞ」「こそ」もない『経政』の謡は「…けり」で終わってます。 燈火を吹き消して暗まぎれより。魄霊ハ失せにけり。魄霊の影ハ失せにけり 一応、「けり」の活用表を挙げておきます。なんだか中高生に戻った気分です(苦笑)
考えてみれば、古語文法の知識を実際に役立てて使うことができるのは、能の謡を習ってる人ぐらいじゃないのでしょうか(笑) 私は古典を読むのが趣味ですけど、読む上では活用形など気にしなくても読めますし。 (2004/03/18) |
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