猫の子の仔猫

御簾より走り出る猫
『源氏物語画帖』より御簾より走り出る猫
(土佐光吉/画)
黒猫愛でる宇多天皇
寛平元年(889)
命婦さまという御猫
長保2年(1000)
猫怖ぢの大夫
寛弘年間(1004-1012)
大納言の姫猫?
治安2年(1022)


 平安時代の始めの頃の話です。漢学好きだった嵯峨天皇が、小野篁を試そうとして、ある謎かけ文を読ませました。

 子子子子子子子子子子子子

 これがその謎かけ文です。おバカな私には全然分かりませんですが、篁はさすがは「鬼才」の評判を取る男。これを平然と解いてしまうのでした。そんなわけで正解ですが、前半の「子」6つで「猫の子の仔猫」と読みます。「子」という字は「ね」とも「こ」とも読めるからですね。「の」は挿入ですが。後半は「子」を「し」と読んで「獅子の子の仔獅子」と読むそうです。正解の提供者はりりえのひめみこさんと沙耶さん。ありがとうございました。

 以上、「猫の子の仔猫」と題して、古代の猫の歴史について書く前振りでした(笑)

 日本でいう一般的名称としての「ネコ」は、厳密な学名ではイエネコ[Felis Catus]というそうです。イエネコは、リビア猫という野生猫を穀物をネズミから守る目的で飼い慣らしたものだと言われています。「猫」という漢字自体、「苗」を守る「獣」の意味から成り立った文字のようです。

 日本では縄文時代の貝塚からヤマネコの骨は出土するそうですが、イエネコは仏教の伝来とともに経文や仏典類をネズミから守るために持ち込まれたものだといわれています。

 猫が文献に初めて登場するのは平安時代初期の説話集『日本霊異記』においてです。それ以前の『古事記』『日本書記』『万葉集』には残念ながら猫のことは全く見ることができません。

 その後、平安時代後期になると、『源氏物語』で柏木が女三宮の姿を垣間見ることになる事件(上の絵はそのシーンを描いています)など、貴族の間で猫が愛玩されていた様子が見えてきます。ま、元々私が猫に興味を持ったのは、この『源氏物語』の話なんですが、ほかに『枕草子』『更級日記』などにも猫のことが登場します。

 ちなみに猫は『和名抄』によると、古くは「ねこま」と呼ばれていたようです。

(written on 2002/02/19)


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「世の中に昔語りのなかりせば―」
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