とくい能 ゆかた祭

2005年7月24日(日)18時開演 於:山本能楽堂

★解説 山本章弘

★着物ショー「真夏の夜の夢」 ひろ着物学院

★観世流能『雷電』
 前シテ(菅丞相の霊)/後シテ(雷神)=山本章弘
 ワキ(法性坊律師僧正)=福王和幸
 アイ(法性坊の能力)=善竹忠亮
 地頭=波多野晋
 笛=斉藤敦 小鼓=成田達志 大鼓=守家由訓 太鼓=井上敬介

★抽選会 ゆかた・着物での来場者対象

 「ゆかた祭」ということで浴衣か着物姿の女性客がほとんどで、びっくり。まあ、半分ぐらいは着物ショーをした「ひろ着物学院」の生徒さんたちのようでしたが…。山本能楽堂でここまで大入りなのは、初めて見ました。こんな色とりどりの見所(能楽堂の客席)も初めて。

★着物ショー「真夏の夜の夢」

 着物ショーというか「着付けショー」。様々なBGMに乗って、踊りながら帯を結んだりしてました。体を一回転させるのは帯を回す動作を兼ねていたり、よく練られていたように思います。でも、「川の流れるように」のサビのメロディに合わせて、伊達締めをパッと広げるのは思わず笑ってしまいました。失礼だとは思いつつも(^^;)

 最後に白無垢姿を2人がかりで着付るのを見せてくれましたが、手のかかることですね…。場所が能舞台であることもあって、能装束の着付けをどうしても連想してしまいました。

★観世流能『雷電』

 比叡山延暦寺の座主・法性坊律師僧正のところへ菅丞相の亡霊が現れ、生前の恩義に謝し、打ち解けて語りあっていたが、不遇の中に死んだことで梵天帝釈の憐れみを受け、雷神となったので、これから内裏へ行って荒らし、邪魔な者を殺そうという。その時に内裏からお召しがあっても決して参内なさるなと頼むが、法性坊がそれを拒むと、丞相はたちまち鬼の姿を現し、供え物のザクロを噛み砕き妻戸に吐き掛けると、火焔となって燃え上がるが、法性坊が印を結び、消える火炎と共に丞相は姿を消した。(中入)
 やがて参内した法性坊が法華普門品を読誦していると、暗雲雷鳴轟き、雷と化した菅丞相が現れる。紫宸殿・清涼殿・弘徽殿と祈る法性坊と丞相が追い合う内に、ついに帝は「天満大自在天神」の称号を贈り、菅丞相はこれまでと虚空に消えうせるのだった。

 シテの山本章弘師、ワキの福王和幸師、小鼓の成田達志師は昨日に続いての配役。役者って凄いですね。

 今日は日本三大祭の1つでもある大阪・天神祭の宵宮祭なので、天神こと菅原道真ゆかりの『雷電』。とはいえ、『雷電』はあんまり道真を良いようには描いていない能ですよね。宝生流の場合、菅公(道真)を祖先とする加賀藩主前田斉泰(1811-1884)が菅公950年忌の嘉永5年(1852)に改作させた『来殿』という曲があって、後半、神号を賜ったことへの感謝の舞を舞うものなんだそうです。天神祭関係で演じるなら、『来殿』の方が似合ってるかもしれません…。主催の山本章弘師が観世流だから、仕方ないですけれど。

 ちなみに菅原道真関係の能としては、道真没後1100年祭だった2002年に、大阪天満宮で復曲された『菅丞相』という曲もあって、確か山本章弘師もツレとして参加されていた覚えがあるのですが…持ち出してくるわけにはいかなかったのでしょうね。

 前場で、頼みをワキが拒んだ途端、シテの雰囲気が凄まじく変わる箇所。後場では一畳台が地謡前と脇正面に置かれて、紫宸殿・清涼殿・弘徽殿などの御所の棟々を表していて、シテとワキが追い掛け回すあたりは面白いですね。ただ、割とあっけなく終わってしまうところがあって、後シテが早笛で登場したり舞働を舞ったりして、その雷神としての威力を示す部分があっても良いのに…と少し残念に思ったりもしました。

★抽選会

 終了後、ゆかたを含めた着物での来場者対象に抽選会がありましたが、ゆかたを着て行ったところ、「大阪の旬(あじ)」というコーヒーを頂けました。ホントは翌日の天神祭船渡御の「能船ペア鑑賞券」が欲しかったんですけれど…何か頂けただけで十分、幸運です。ひろ着物学院提供の女性もの浴衣だったりしたら、誰かにあげるしかなかったわけですし(笑)

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柏木ゆげひ

大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜→現在は会社員しながら能楽研究の勉強中。元が歴史ファンのため、能楽史が特に好物です。3ヶ月に1回「能のことばを読んでみる会」開催中。能楽以外では日本史、古典文学などを好みます。

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