能楽(のうがく)
本来、「能」とは歌舞劇全体を指す言葉(参考)。大和猿楽に所属した観阿弥・世阿弥親子が室町時代に活躍、猿楽の能を大成した。江戸時代には武家の式楽として重んぜられたが、当時もまだ「猿楽」と呼ばれていた。「能楽」の称は明治時代に新しく名付けられたものである。能と狂言を両方含んだ言葉だが、狭義で狂言を除いた能のことを指す場合もある。
狂言(きょうげん)
物まねの要素や写実的なセリフをもつ滑稽劇。古くから能との関係が深く、共に同じ能舞台を使って演じられる。能と狂言を交互に演じる風習も古いらしい。普通に「狂言」という場合は、独立して演じられる「本狂言」のこと。能の登場人物の一役を演じる「間狂言(あいきょうげん)」もある。
謡曲(ようきょく)
能の詞だけをいう場合に謡曲と呼ぶ。これだけを習ってる人も結構多い。癖になるとついつい口からこぼれるようになる(笑)
薪能(たきぎのう)
夏などに野外で行われ、照明に篝火を用いる能や狂言の公演。最近は夏の風物詩として定着しつつある。本来は奈良興福寺の宗教行事だが、今では観光的な意味合いが強い。市町村などが町おこしなどに行うことも多い。
中入(なかいり)
前半と後半に分けられた能で、シテが一度退場すること。多くの場合、中入から後半が始まる間に、間狂言(あいきょうげん)が演じられる。中入の間に装束替などが行われる。狂言でも多くはないが中入のあるものもある(『釣狐』『蛸』など)。
作り物(つくりもの)
主に竹や布で使って作られた、能の舞台装置。演能のたびに作られる。ほとんどは竹で芯をつくり、白い布を巻いただけの簡素なもの。狂言の多くの曲では使われないが、能と共通の作り物を使う曲もある。
シテ(して)
能や狂言の主役。漢字で書くと「為手」。途中で中入がある場合は中入りの前を「前シテ」、後を「後シテ」という。能の場合、多くの曲で能面をかけて演じるが、直面(ひためん)といって面をつけないものもある。ただしその場合でも顔の演技などは行われず、あくまで顔を面と同じように使う。狂言の場合、主役を表す「オモ」という言葉もあるが、あまり使われない。
ワキ(わき)
助演者。ほとんどの場合最初に登場して、シテを引き出す役割を持つ。必ず直面。曲中のほとんどの時間を舞台上の「ワキ座」と呼ばれる場所で座っているが、曲によってはシテと大立ち回りを演じるものもある(『土蜘蛛』『紅葉狩』など)。
アイ(あい)
間狂言(あいきょうげん)を演じる人のこと。多くはシテの中入の間に、その能にまつわる話を語る「語り間(かたりあい)」だが、曲によっては積極的にシテやワキと関わりを持って演技をする「アシライ間」もある(『船弁慶』の船頭や『花月』の男など)。
ツレ(つれ)
普通に「ツレ」という場合は、シテツレのこと。シテの連れ、助演。ワキにつくワキツレもある。アイが2人以上出る場合は主な演者をオモアイ、それ以外をアドアイと呼ぶ。
子方(こかた)
子どもが演じる役。実際の子どもの役のほか、貴人の役(天皇や貴族、源義経)などの場合もある。
アド(あど)
狂言で、シテ以外の演者のこと。狂言の助演者。
地謡(じうたい)
情景描写などを謡う斉唱団。能や狂言のバックコーラス。中央(2列以上の場合は後列中央)に座ってる人が統率をする地頭。指揮者はなく、地頭の息遣いを察して皆合わせる。能の場合は必ず最初から最後まで出ているが、狂言の場合は必要に応じて出入りをし、必要のない曲の場合は登場しない。
囃子(はやし)
能や狂言の楽器演奏。笛・小鼓・大鼓・太鼓の4種類があって「四拍子」という。「三拍子揃った」という言い方は、能の小鼓・大鼓・太鼓の3つの音がが揃うことに由来するらしい。狂言にも囃子の入るものもあるが、近年は省略されることが多い。
後見(こうけん)
舞台の後方に控え、能や狂言の進行を見守る人。装束を直したり小道具の受け渡しなど演技の世話もする。演者の装束付けも後見が行い、また不測の事態、たとえば演者が絶句した時に後をつけるのは後見の役目。(もし、演者が演技中に発病や事故で故障を生じた場合は代わって演じることになっている) 基本的にシテと同格もしくはそれ以上の芸歴や実力を持たねば後見は勤まらない。
(2004/09/21)